成績アップにはまず眠ること?
睡眠と学力の深い関係
学力向上のためには、適切な睡眠が不可欠です。
成績アップのため工夫と努力を惜しまない家庭こそ知っておいてほしい大切な睡眠の話を、脳科学の観点から脳科学者中野信子先生が解説します。
中野信子さんのインタビュー動画はこちら
寝る子の学力は育つ
寝る子は育つといいますが、寝る子は学力も育つようです。
研究によると、推奨される9〜11時間の睡眠をとらない子供は、算数や読解力、作業記憶のテストで成績が低下することがわかりました。一部の研究では、睡眠は子供の社会経済的背景よりも強く学力に影響することが示されています。
背景を解説していきましょう。
学力向上のためには記憶の定着が不可欠ですが、これは眠っているときに促進されます。起きているときに学んだ情報は、眠っているときに脳で再生・保存されるのです。
また、脳のシナプス(神経細胞同士が連絡する接点)は睡眠中に強化・剪定され、これにより言語の習得が進み、問題を解決する力や創造性が育まれます。
さらに睡眠は集中力にも影響を及ぼすことがわかっています。睡眠不足の子供は集中力が低下し、授業の理解が困難になることがあるのです。
十分に眠っていなければ、物事の理解も進まないし、内容の定着も難しくなるというわけですね。
また、睡眠は感情の制御にも極めて重要です。睡眠不足はイライラや感情のコントロールの低下を招き、対人関係に悪影響を及ぼします。これは情緒不安定や自尊感情の低下にもつながりかねません。
メンタルヘルスの状態は、落ち着いて授業を受けられるかどうかに深く関わってきます。
学力を向上させたいのであれば、まずはお子さんに十分な睡眠をとらせてあげることが大切だといえるでしょう。
仕事のパフォーマンス向上にも睡眠は不可欠
また適切な睡眠が必要なのは子供だけではありません。睡眠を十分にとることは、成人にも恩恵をもたらします。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』によると、7〜9時間の睡眠を取っているリーダーは、周囲に良い影響を与えるリーダーシップと問題解決力が高く評価されました。
これは十分な睡眠が共感力を増幅させ、感情の制御や対人スキルを向上させることが影響しているかもしれません。
また、十分なレム睡眠がパターン認識や洞察力を高めている可能性もあります。
十分に休養を取っている人はストレス耐性と回復力があり、困難な状況でも高いパフォーマンスを維持できます。生産性との直接的な因果関係は明言しにくいですが、無関係と考えることもまた難しいでしょう。
また慢性的な睡眠不足は、意思決定を司る前頭前野の機能を著しく低下させます。
これはリスク評価能力を低下させるために、時として衝動的な行動や無謀な判断を取ることにつながります。共感力や感情制御も低下するため、社会的に不適切な行動を取るリスクを増加させてしまうのです。
これらの影響を鑑みると、成人であれ、子供であれ、パフォーマンスの向上を目指すのであれば、適切な睡眠を確保していくことは重要だといえそうです。
急がばまわれ。睡眠時間を減らして机に向かうよりも、まずは眠ることを大切にした方が長期的には良い結果を得られるかもしれません。
この記事の監修者
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医学博士/脳科学者
中野信子 -
東京大学工学部 応用化学科卒業
東京大学大学院 医学系研究科脳神経医学専攻 博士課程修了
フランス国立研究所にて博士研究員として勤務
東日本国際大学教授に就任
京都芸術大学客員教授に就任
森美術館理事に就任
現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。