睡眠不足が生活習慣病を招く?
驚きのメカニズム
睡眠不足は、知らず知らずのうちに肥満や高血圧症、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めているかもしれません。
生活習慣病と睡眠不足の関係を脳科学の視点から脳科学者中野信子先生が解説します。
中野信子さんのインタビュー動画はこちら
生活習慣病予防には「無意識」の領域を制御せよ
生活習慣病は「無意識」の選択が大きく影響する疾患です。
つい食べ過ぎたり、うっかり夜更かししたりすることが蓄積して発症するものだからです。
そのため生活習慣病を予防するには、意志の力だけで制御しようとするのではなく、身体に悪影響を及ぼす可能性のある習慣を自然に制御できる環境を作ることが大切です。
睡眠はその基礎となるものです。なぜなら睡眠は、食欲と代謝の調整に大きく関与するからです。
睡眠不足は食べ過ぎを招く
まずは睡眠と食欲の関係について紹介しましょう。質の良い睡眠をとることは、食べ過ぎを防ぐことにつながります。
睡眠が不足すると、空腹を感じさせるホルモンであるグレリンが増加し、満腹を感じるホルモンであるレプチンが減少します。これにより、必要以上に食べすぎてしまうリスクが上昇します。
また、睡眠不足は脳の意思決定を担う領域の活動低下を招きます。そのため自己制御が効きにくくなり、つい食べすぎてしまう可能性が高くなります。
さらに睡眠が不足すると脳の報酬系の回路の反応が強まるため、高カロリーのものや甘いものを食べたくなるかもしれません
睡眠不足は消費カロリーにも関係
睡眠不足によるリスクはそれだけではありません。たとえ食欲をコントロールできたとしても、身体には肥満につながりやすい変化が起こります。
その一例が、インスリン感受性の低下です。睡眠が足りないと、ブドウ糖の処理能力が落ち、脂肪蓄積が進みやすくなります。
また睡眠が不足していると翌日の身体活動の量が減ってしまうことがあり、これにより消費カロリーが少なくなることも、繰り返されれば肥満につながっていきます。そのため長期的なダイエットの成功率が下がると考えられます。
生活習慣病のリスクを下げる、質の良い睡眠
これらのリスクを低減するためには、質の良い睡眠をとることが大切です。
質の良い睡眠をとるためのポイントの一つは、脳を含む体の深部の温度を十分に下げることです。
そのため、熱が体内にこもりにくく、寝返りのしやすい寝具を選ぶことが、良質な睡眠をとることにつながります。
人生100年時代。長く健康で暮らすために睡眠の質を向上させたい方は、まずは寝具選びからこだわってみるといいかもしれません。
この記事の監修者
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医学博士/脳科学者
中野信子 -
東京大学工学部 応用化学科卒業
東京大学大学院 医学系研究科脳神経医学専攻 博士課程修了
フランス国立研究所にて博士研究員として勤務
東日本国際大学教授に就任
京都芸術大学客員教授に就任
森美術館理事に就任
現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。