「寝溜め」は本当に可能?
脳科学的に解説
多忙な現代人の睡眠時間は短くなりがち。
特に平日は仕事や家事に忙しく、慢性的に寝不足になった結果、休日に「寝溜め」をしている人が少なくないのではないでしょうか。
「寝溜め」の効果について脳科学者中野信子先生に脳科学的な知見から解き明かしてもらいました。
中野信子さんのインタビュー動画はこちら
睡眠の効果は疲労回復だけじゃない
時間にゆとりのある日にたっぷり寝て、忙しい日の睡眠不足を補うことができたら、どんなに便利でしょう。
それができるように願う気持ちは理解できますが、残念ながら人の脳はそのようにはできていません。
実は、睡眠で得られる効果は疲労回復だけではないのです。
睡眠時には脳の老廃物を洗い流すという重要な工程が行われています。
この工程は毎日行われる必要があり、睡眠が不十分だと脳に老廃物が蓄積し健康な脳細胞に障害をもたらす可能性があります。
また睡眠が不足していると新たなシナプスが作られにくくなるため、記憶力や学習能力の低下を招く可能性もあるのです。
脳科学の視点から見ると、睡眠は受動的な休息時間ではなく、脳の健康、認知、感情の調整において重要な役割を果たす能動的なプロセスだといえるでしょう。
眠るのも仕事のうち
では「寝溜め」はまったく意味がないのでしょうか。
実は、一部の疲労の回復には役立ちますが、慢性的な睡眠不足の影響を完全には取り除くことはできません。
数日間の軽度な睡眠不足であれば、週末の長めの睡眠で気分や反応速度、注意力の一時的改善は期待できます。
一方で慢性的な短時間睡眠(6時間未満)が続くと、週末に多く眠ったとしても、ホルモンバランスや代謝、記憶定着は完全には回復せず、肥満、糖尿病、心疾患、うつ、認知機能低下のリスクが高まります。
また、週末にまとめて寝るといった行動は、体内時計のズレをもたらします。
例えば日曜日に昼過ぎまで寝てしまうと、その夜は寝付きが悪くなり、月曜日は再び睡眠不足の状態になってしまうというわけです。
平日の日中に高いパフォーマンスを発揮したければ、毎日きちんと睡眠をとることが大切です。
「寝るのも仕事のうち」と考え、睡眠時間を確保できるスケジュールを立てることをおすすめします。
この記事の監修者
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医学博士/脳科学者
中野信子 -
東京大学工学部 応用化学科卒業
東京大学大学院 医学系研究科脳神経医学専攻 博士課程修了
フランス国立研究所にて博士研究員として勤務
東日本国際大学教授に就任
京都芸術大学客員教授に就任
森美術館理事に就任
現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。