中野信子から学ぶ「睡眠」のチカラ

スマホ依存だから眠れない?
眠れないからスマホに依存?

スマホ依存だから眠れない?眠れないからスマホに依存?

やろうと思っていたことがあったのに、スマホを眺めているうちに貴重な時間がなくなっていた……。
このような経験をしている人は少なくないのではないでしょうか。

現代人はなぜ、スマホを漫然と見続けることをやめられないのでしょう。
実は、睡眠時間が深く関係しているかもしれません。脳科学者中野信子先生が脳科学の観点から解説します。

中野信子さんのインタビュー動画はこちら

スマホはなぜやめられない?

美味しい食事や親しい人との交流、活躍や日頃の行いを褒められるといった経験をすると、人の脳からはドーパミンが放出されます。
ドーパミンは脳内の報酬系に関わる神経伝達物質で、快感をもたらします。
そのため、ドーパミンが放出される行動は繰り返しとりたくなるのです。

行動は繰り返されることで学習され、習慣を強化します。つまり、ドーパミンが放出されるとわかった行動は反復して行われやすいのです。

スマホにはSNSや動画視聴、メッセージなど、ドーパミンを放出させるさまざまなアプリが組み込まれています。
称賛や共感を表す「いいね」の通知や、注目されていることを知らせるサイン、新たな知識を得られる動画などは脳に刺激を与え、ドーパミンの放出を引き起こします。
すると快感が生じ、それを繰り返すことで脳の報酬系は強く刺激されます。そしてここから、依存が始まっていくのです。

スマホ依存症の仕組み

スマホを使用することでドーパミンが放出されることがわかると、脳はそれを繰り返し欲するようになります。
すると日に何度もスマホを確認する行動が強化されるようになるのです。

しかし、行動を繰り返すうちに放出されるドーパミンの量は減少し、より多くの刺激を必要とする耐性が生まれます。すると、さらなる刺激を求めて一層行動は強化されていきます。

これは典型的な行動依存症のメカニズム。脳内ではギャンブル依存症などと同じことが起きています。

依存症が進行すると、ときに行動に歯止めが効かなくなることがあります。すると仕事や生活に支障をきたすようになり、ときに深刻な問題へと発展します。

スマホ依存症になりやすい人とは

依存症になりやすい素因は誰にでもあるといえます。特定の性質を持つ人だけが依存症に陥りやすいということはなく、心地良さを感じる行為に執着することで、依存症は誰にでも発症し得ます。

しかし、睡眠が適切にとれていない人は、とれている人に比べて依存症を発症しやすいということがあるかもしれません。
というのも、睡眠が不足していると自己制御能力が低下し、感情を制御しにくくなるのです。そのため「やめた方が良い」とわかっていることをやめることが難しくなります。

さらに悪いことに、スマホの長時間使用は睡眠時間を削り、さらなる睡眠不足の原因となります。するとますます自己制御能力は低下し、依存が強まる負のスパイラルが生じます。

適切な睡眠がとれていればスマホ依存症を防げるというわけではありませんが、自己制御能力を保つことができれば「今日はスマホをやめて本を読もう」という選択を取りやすくなるでしょう。

スマホ依存症を抜け出したい、スマホを触る時間を短くしていきたいと考えているのであれば、まずはしっかりと寝てみることがその一歩となるかもしれません。

この記事の監修者

医学博士/脳科学者
中野信子
東京大学工学部 応用化学科卒業
東京大学大学院 医学系研究科脳神経医学専攻 博士課程修了
フランス国立研究所にて博士研究員として勤務
東日本国際大学教授に就任
京都芸術大学客員教授に就任
森美術館理事に就任

現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。

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